和歌山県岩出市という決して便利とは言えない場所に有るレストラン「ヴィラ・アイーダ」。住宅地に突然現れるこのレストランに、何故多くの人がわざわざ訪問するのか?それは、ここでしか食べる事が出来ない料理が有るからです。
メニューの中心は、レストランの周りの畑で獲れた野菜やハーブ。それらが絶妙なハーモニーを奏でる料理は、その野菜を自ら育て素材を知り尽くした小林シェフによる、ここでしか作れない料理として提供されるのです。
ヴィラアイーダでは、希望すれば食事の前に、奥様(元シェフ)のガイド付きでレストランの周りの畑を見学させて頂けます。
この時期は一年間で最も野菜の収穫が少ない(!)という夏の時期。来るべき秋に向けて、準備をしている最中とのことでした。
それでは、レストランに戻り、いよいよ料理を頂きます。
まずはこちらのウェイティングスペースに通されます。 「ヴィラ・アイーダ」の現在の営業スタイルは一日一組限定。そう、この広いスペースが「貸し切り」なのです。なんて贅沢。
(紫蘇のジュース)
ウエルカムドリンクとして、紫蘇のジュース。ソルティ・ドックのようにコップのふちについた紫蘇塩と合わせます。さっぱりと食欲が増進されます。
(マイクロキュウリ、ブルーベリー、フィンガーライム)
まず、綺麗な見た目に見とれます。青臭さの無いキュウリ、ブルーベリーの甘味、フィンガーライムの酸味、その他ハーブなどが一体となり、一口ごとに変わる味を楽しんでいると、あっという間に無くなってしまいました。
ここで、奥のダイニングエリアへ。差し込む夕日が素敵な雰囲気。
繰り返しになりますが、一日一組の営業ですので、このエリアも当然貸し切りです。 他のお客様に気兼ねすることなく、自分のペースで提供される料理に集中できる素晴らしい環境。
この後コースが始まりますが、「ヴィラ・アイーダ」の料理は、普段口にしないような組み合わせが多く、見たり、食材を聞いても、すぐには味をイメージ出来ません。口に入れるまで「?」という感じなのですが、口に入れると「美味しい!」となるのです。
それが毎回楽しくて、夢中で食べるのですが、それを文字にするのは難しい、ということをご理解ください。という、言い訳をコース料理紹介の前に(笑)。
<パプリカ>
ホオズキのジュースに入った黄色パプリカのジュレ。上にはバジルの花。少しスパイシーなバジルの花がアクセントになっています。
<オクラ サザエ モロヘイヤ>
サザエが入っているのですが、主役はやっぱりオクラとモロヘイヤ。ツルムラサキなども入っていました。サザエの旨味に負けない、野菜の美味しさ。
<トマト 柚餅子>
8種類のトマトと、それぞれにハーブの花。様々なトマトの味の違い、ハーブとのハーモニーを楽しみます。美味しかったなぁ、トマト。
(自家製パン)
袋に入って自家製のパンが登場。噛みしめると旨味を感じる、美味しいパンでした。
<ほうずき ピクルス>
シンプルなようで様々な食材が。ホウズキ、キュウリ、トマトのピクルス、ハラペーニョの辛さ、ヨーグルトソースと合わせます。緑で統一し、黄色がアクセントになっている見た目も綺麗。
<茄子 鯵>
夏の主役、焼き茄子。美味しいに決まってます。鯵、柚子胡椒入りクリームソース、野菜の炭(?)や胡椒などのスパイス。このハーモニー、食べて下さい、としか言えないです。
<赤いか ピーマン>
驚くほど美味しいピーマンのステーキ。赤いかも美味しいのですが、メインはやっぱりピーマン。ソースはピーマンのソース、パウダーはイカ墨、と旨味が何層にも重なり、押し寄せてくる。
<鰆 苦瓜 ししとう>
鰆の火入れが絶妙なのは、見ての通り。ただ、この皿で印象的だったのは、緑色のソース、ゴーヤのソースです。とても苦いのですが、これが癖になるのです。気が付けばこのゴーヤのソースを食べる為に、絶妙な火入れの鰆を食べている。恐るべし、小林シェフの野菜マジック。
<茄子 熊野牛>
夏の季節のメインは、やっぱり茄子。トロトロに焼かれた茄子、焦げも効果的に香ばしさをコントロールしながら使われており、その甘みに驚きます。熊野牛には熊の手の肉も添えられており、印象的でしたが、茄子がそれを凌駕する存在感。
<ホロホロ鳥 フォー>
シメは、まさかのフォー。シェフに何故フォーなのですか?とお聞きすると、一時期フォーにハマってて作っていたら美味しかったから、とのこと。確かに美味しかった(笑)。小鉢には辛いトマトの付け合わせ。
<西瓜>
デザートに入ります。まずは、スイカのグラニテ。塩分を感じる味付けであり、スイカに塩が合うのは皆さんご存知の通り。
<無花果>
無花果と黒糖のソースとアイス。この時期の無花果は本当に美味しい。
<小菓子>
ブルーベリーのケーキとシュークリーム。小菓子まできっちり美味しくて、嬉しくなります。
<小菓子>
これは、山椒のラムネ。スパイシーさがフィニッシュに相応しい。
(コーヒー)
カップは信楽焼の大谷製陶所、大谷哲也さんの作品。奈良のコムニコでも使われていましたが、やっぱり素敵な器。
ということで、ヴィラ・アイーダでのディナーを紹介してきました。
ここ最近日本では、地方の食材が見直され、評価が高まってきているという状況の中で、「人がいる街中にレストランを作って、そこに最高の食材を集める」のとは逆に、「最高の食材が有るところにレストランを作り、そこへ人が食べに行く」、そういう流れが今後は一つの主流になる気がしています。
その流れを先取りし、既に実現している「ヴィラ・アイーダ」こそ、レストランの未来の姿なのでは、と思いました。提供する料理をイメージしながらシェフがレストランの周りで野菜を育て、最適な調理方法で、一日一組のゲストに集中して、最高の料理を出す。これは一つの理想形では無いでしょうか。
そして、何よりコース料金が一人¥18,000(+税)というのも嬉しいポイントです。この空間、シェフを一組で独占できる訳ですから、とてもリーズナブルだと感じました。
季節を変えて定期的に訪れたいレストランです。次訪問した時は、どんな料理が出るのか、今から楽しみです。
それでは、また。次回の美味しいお店でお会いしましょう。
※提供される野菜は、当然全て自作ではなく、仕入れているものも有ります。自前の畑で獲れたものを中心に提供するスタイルになっている、ということです。
【ヴィラ・アイーダ (Villa Aida)】
アクセス:関西国際空港から車で30分。駐車場完備。
営業時間:12時30分~(※開始時間は予約時に相談)
定休日:不定休
公式Webページ:http://villa-aida.jp/
予算:メニューは、お任せコース¥18,000(税別、サ込)のみ
(その他)ゴ・エ・ミヨ2020:3トック(16.5/20)