突然ですが「板門店」をご存知でしょうか?
「板門店」とは?
朝鮮半島中間部に位置する朝鮮戦争停戦のための軍事境界線上にある地区である。北側の朝鮮人民軍と南側の国連軍の停戦協定が1953年に調印され、同年10月以降は停戦を監視する「中立国監視委員会」と「軍事停戦委員会」が設置され、停戦協定遵守の監視を行っており、60年以上に渡る朝鮮の南北分断を象徴する場所となっている。
「板門店」は個人旅行では近付くことが出来ないエリアなのですが、実は以下リンクのように定期定期にツアーが開催されており、ツアー限定で行くことが出来るのです。土曜日開催のツアーもあるので、旅程により都合の良い日を選べます。
ということで、今回のソウル観光では、ずっと行きたかった「板門店ツアー」に参加し、非常に貴重な経験をすることが出来ましたので、レポートをお届けします。
普段の観光とは少し違う韓国を感じるレポート、是非最後までご覧ください。
集合はプレジデントホテル
今回参加したツアーは、ソウル市庁横の「プレジデントホテル」集合でした。
受付をするため、フロント前のエレベーターで3Fへ上がります。
3階にある「国際文化サービスクラブ」でパスポートによる本人確認などの受付を行いました、
ツアーの注意事項
「板門店ツアー」は特殊なツアーですので、参加に際し注意事項が多いです。主なものは以下の通りです。
・パスポート持参必須(国籍が、大韓民国(在日韓国人を除く)、北朝鮮、リビア、スーダン、シリア、アフガニスタン、イラン、イラク、キューバ、パキスタンの方は参加できません)
・服装規定有り(作業服、レザー、破れたジーンズ、ミニスカート、半ズボン、襟無し、軍服スタイルなどの方は参加できません)
・ツアーは政治的な理由により、急きょ中止になる可能性があります
参加したツアーの前日には、何と米国務長官が板門店を視察しており、ツアーは中止となったようです。
非常に政治的な場所ですので、中止になる可能性が常にあることは注意点ですね。
いざ、出発
現地へはこちらのバスで移動します。
バスの中。大型観光バスですので、約1時間の移動も快適でした。車内では日本語が堪能なガイドさんから注意事項や、エピソードなど、様々な説明を受けます。
北へ向かう道中、サービスエリアに寄り、休憩時間が有りました。こちらはサービスエリアに居た方々。
サービスエリアを後にし、さらに北へ向かう道中の様子です。非武装地帯(JSA)と道路が近いところでは、鉄条網と定期的に設置されている見張り所が有り、徐々に緊張感が高まります。
ついに軍事境界線へ
ここで、改めて用語を説明。
軍事境界線:朝鮮戦争の休戦ライン(38度線とも呼ばれる)
非武装地帯(DMZ):軍事境界線の南北2km(幅4km)に設定された地域のこと
板門店は軍事境界線上に有りますので、板門店へ向かうには、まずはDMZ入る必要が有ります。
DMZへ向かう道中では、様々な注意を受けました。DMZに入ったら、指示に従い、絶対に勝手な行動をしないこと。特に「板門店」では北朝鮮側を指さしたり、手を振ったり絶対にしないこと、した場合は何が起きても保証出来ない、などこれから行く場所は特別な場所なんだという思いを強くする注意ばかりでした。
そして、途中から撮影禁止が言い渡され、緊張感は増していきます。。。
DMZの入り口に差し掛かると、検問のようなゲートで1回目のチェックが有ります。車内に入ってきてチェックするのは、現役の韓国軍の軍人。リストを見ながら、乗客の服装などをチェックしていきます。この時点で観光気分は吹き飛び、凄い緊張感。。。
さらに奥に進んだ2回目のチェックでは、国連兵が乗り込み、より細かいチェックを受けます。OKであれば、「国連のゲスト」としてのバッチを貰い、カメラと貴重品のみ身につけ、それ以外の荷物をバスに残して、バスを降ります。
バスを降りた後は、一旦この「ビジターセンター」に全員入ります。この写真もこの方向だけは撮影可能ですが、他の方向は撮影してはならない、など細かい指示を受けます。
中では、改めての注意事項と、「板門店」の歴史などの説明を受けます。そして、最後に「宣言書」へのサイン。
サインした「宣言書」は最後に返却されましたので、実物をご覧ください。
注意事項と共に「何が有っても保証」しない、という内容になっています。さすがにこんな内容の書類にサインしたことは無いですが、サインせざるを得ない状況ですので、サインして提出しました。
いよいよ板門店へ
ここから先は国連のバスに乗り、いよいよ「板門店」へ向かいます。道中、訓練している国連兵の方々を見ながら、ここは特別な場所なんだと強く意識させられます。
そして、いきなりですが、これが「板門店」です。現場の緊張感は凄いです。冗談でも禁止事項をやろうという気にはなれません。奥に見える灰色の建物は北朝鮮のものです。そして、中央の青い建物が「軍事停戦委員会本会議場」です。韓国と北朝鮮が必要に応じて会談などを実際に行っている場所です。
ツアーは「軍事停戦委員会本会議場」の中の見学から始まりました。「時間は5分だけ!」と強く言われ、中へ誘導されます。
会議場の中は、なんと撮影自由。このテーブルで実際の交渉が行われているのです。。。すごい。。。
そして、これが会議場の窓の外を撮影したもので、真ん中の低い「壁」が、南北の軍事境界線です。したがって、この写真は北朝鮮側に立って撮影しています。「会議場」は軍事境界線上に建っていますので、北朝鮮領に入ることが出来るのです。そうです、ついに北朝鮮領に入ったのです!?
さらに、中には韓国兵が見張り?としているのですが、なんと一緒に記念撮影自由。限られた時間なので、あわただしく順番に記念撮影をします。韓国兵の後ろの扉を開けると、そこはもう北朝鮮。。まあ、冗談でも開けようというアクションは起こせる雰囲気では無いですが。。。
その後、会議場をそそくさと退散させられてから、全体の撮影タイム。許可されたエリアでおとなしく写真撮影をします。改めてあの建物の向こうは北朝鮮って凄いですよね。
建物の前からは見張りの北朝鮮兵がこちらを見ています。前日の米国務長官視察時は、かなりの数の兵士が出てきていたそうです。
その他資料など
現地でしか感じることが出来ない緊張感を感じながらも、見学の時間は終了となり、もとの「ビジターセンター」に戻ります。この段階で同行していた韓国兵の方も笑顔になり、こちらも緊張が解け、ほっと一息。
ビジターセンターに有った少し怖い韓国兵の模型。板門店に配属される韓国兵はエリート中のエリートとのこと。ツアーに同行した兵士は、英語も堪能でしたし、聞くとオバマ前大統領と同じコロンビア大学卒業とのことでした。ルックスも良かったですし、広報的な役割も担っているんでしょうね。
朝鮮戦争休戦協定の英語正文。終戦ではなく、いまだに休戦なんですよね。。
韓国、北朝鮮ともにJSA内に村が有り、国旗を掲げています。かつてはこの国旗の高さを競った時期もあったようです。(結果、高さはそれぞれ、北朝鮮国旗160m、韓国国旗は100mとのこと)
韓国側の村は「自由の村」と呼ばれ、ガイドさんによれば約450人が住んでおり、納税と兵役を免除され、農業を営んでいますが、出来た農作物は国が高価な値付けで一括買い上げするとのことで、かなりの高収入(1千数百万円?!)となっているようです。取れた農作物は韓国内では非常に人気とのこと。ただ、特殊な地域ですので、制限も多く、いざという時は非常に危険であることは間違いありません。
こちらは1976年に起きた「ポプラ事件」の様子を伝える模型。「ポプラ事件」とは、ポプラの木を切ろうとした韓国側の兵士に北朝鮮側兵士が襲い掛かり、2名のアメリカ軍兵士が死亡した事件です。板門店はそういうことが常に起こり得るエリアという事ですよね。
復路「自由の橋」
板門店、DMZを後にし、復路は、「臨津閣」に寄ります。ここは、韓国で個人が自由に行くことが出来る最も北朝鮮よりの地域となります。
往路にいらっしゃったお二人がここにもいらっしゃいました。
これは「望拝壇」。北朝鮮に家族を残したまま韓国に住んでいる人たちのメッセージが沢山掲げられています。韓国籍では、板門店ツアーに参加出来ないので、ここが一番北朝鮮に近い場所なんですよね。
そして、左手に見える橋が「自由の橋」です。橋の先は北朝鮮へと線路が繋がっているのですが、現在は当然渡ることは出来ません。元々は一つの国で繋がっていたということを強く感じる景色です。
ソウル市内大渋滞。。。
途中ツアーについている昼食(プルコギ)を食べて、ソウル市内へ戻ります。
ところが、ソウル市中心部に近付くにつれて、ひどい渋滞に巻き込まれて全然バスが進みません。。実はこの状況は、ガイドさんに予告されており、原因はわかっていました。
原因は大規模なデモ
その原因とは、パク・クネ前大統領支持者による大規模デモでした。
結局、ソウル市庁前までバスが近付けないので、少し手前でバスを降りて、その場で解散となりました。この画像はソウル市庁前の様子。凄い人数が集まっていました。
道路は封鎖され、デモ行進が行われていました。
本当に多くの人が参加しており、ここでも韓国のリアルに触れることとなりました。
まとめ
ということで、今回は非常に貴重な経験が出来る「板門店ツアー」のレポートをお届けしました。普段とはかなり違った韓国を感じることが出来るので、興味のある方は是非参加をご検討ください。
今回のツアーに関して、参加するまでは、韓国の政治的な思惑も有り、ガイドさんなどは政治的に偏った説明をすることを予想していましたが、実態は全く違いました。ガイドさんは自分の言葉で話していましたし、質問にもすべて正直に答えていました。(少なくともそのようにみえました)また、ガイドさんの親戚が北朝鮮にいるという事で、ある日突然二つの国に分断された思いも聞くことが出来ました。
繰り返しになりますが、ツアーに参加することで、通常の観光では決して知ることの出来ないことを多く知ることが出来て、参加して良かったと思いました。知ってるようで知らない韓国を理解する意味でもいい経験になると思います。
最後にはデモまで間近で見ることになり、たまには、こんなソウル観光も良いな、と思った一日となりました。
以上、ためたろうでした。
(※本記事の内容は、ツアーに参加した際に確認した内容を理解できた範囲で記載しており、必ずしも正確性を担保するものではないことをご了承願います)